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69話 夭逝

Author: ニゲル
last update Huling Na-update: 2025-06-09 06:15:49

試合のコングが鳴りクマノミの方が真っ先にこちらに向かってくる。腕、というよりヒレから灰を出しそれを固めて斧に変化させる。

「なっ……!!」

咄嗟に防御に移り奴の斬撃を受け止める。この前戦った奴以上の力で押し込まれ、刃がアタイの眼前まで迫ってくる。

しかしそこに割り込まれた光を纏った剣が奴の頭部に迫り、奴は攻撃を取り止めて引き下がる。

「兄者!!」

だが奴が避けたその先にいたイソギンチャク野郎は真紅の触手を伸ばしノーブルを弾き飛ばす。

「うぐっ……ごほっ!!」

触手自体には大して威力はなく、ノーブルも防御や受け身はできていた。ダメージはそこまでのはずだ。

それなのに激しく咳き込み顔を青くする。

「まさかあいつの触手……毒か!?」

アタイはノーブルを担ぎ上げて一旦奴らから距離を取る。クマノミ野郎も一度引き下がって剣が掠った箇所を擦る。

「兄者〜案外アイツら強いかも」

「そうだな……だが我ら兄弟の敵ではない。そうだろう?」

互いに支え合い、二人の戦闘力は単純な足し算ではない。

「立てるか?」

「立てないと思うのかい?」

「おう」

こちらも軽口を叩き合いながら互いに支え合う。連携ならこちらだって負けていない。

とはいえ奴らが強いのも事実だ。クマノミの方は素早く反射神経も良い。あのタイミングで繰り出されたノーブルの攻撃を躱す程に。

イソギンチャクの方も触手の精密さが高く、まるで腕のように扱っている。

「分かっていると思うけど、あの触手は触れたらヤバい。持続性はあまりないが力を吸われる感覚だ」

「なるほどな……」

長時間スタンさせられるわけではないのが救いだが、敵が二人いるこの状況下で動けなくなるのは死と同義だ。こちらも連携してカバーし合わなければ勝機は薄い。

「行くぞ弟よ! ここで打ち勝ち我が一族に繁栄をもたらすのだ!」

イソギンチャク野郎の号令と共に戦闘が再開する。触手には絶対に当たれないので躱しつつ、隙だらけになった奴の触手を二人で切り落としていく。

だがそっちの対応に追われていると今度はクマノミの斧が防げない。

「ノーブル!!」

アタイはその重たい一撃を敢えて受けて吹き飛ばされる。ノーブルの方向へ。

「分かった!!」

言葉は要らずこちらのやりたいことを察してくれて、触手への攻撃
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